インスクリプトのガン・クラブ三部作、すでに数日前に手元に見本が届いており、今度こそ本になりましたので、もはや刊行延期はありません! 確かに20日には発売されるはずです。皆さま、まだのかたはぜひ、ヴェルヌ書店でご予約をお願いいたします。
ところで、その矢先に水を差すようですが、フランス語のテストを作成していたせいか、自分でも自信が持てない点に敏感になっていたせいでしょう、また自分の誤訳を見つけてしまいました……。すでに申し上げたように、『月を回って』の第二章に以下の誤訳があります。頁数はインスクリプト版です。
p.235 下段
誤)「月と向かい合った面」
正)「月とは反対側の面」
これは直そうと思えば直せなくもなかったのですが、あえて「あとがき」ともども残したところです。対して、実は最初から引っかかっていたのに、結局そのまま放置してしまった誤訳が『上も下もなく』第四章に。うーん、これ、今となってはなんでこんな簡単なところに、という感じなんですが、僕はdevoirに苦手意識があって、たぶん考えすぎたのです。素直に読んでいれば避けられたんですが……
p.466 下段
誤)「人々は、大胆な旅行者たちがもはや地球には戻れなくなったものと思い込んでしまったことだろう」
正)「人々は、大胆な旅行者たちがもはや地球には戻れなくなったものと信じざるをえなかった」
いや、たぶん、初等文法をやったばかりの初学者ならなんの躊躇もなく正しく訳せたはずです。嗚呼……皆さま、上記二箇所は、脳内で修正の上、お読みください。
とはいえ、これ以外にも誤訳はあるはずです。お気づきの方はお知らせください。こちらでも気付き次第、順次追加してまいります。

【関連する記事】
14頁下段14行目 ブリスビー→ビルスビー
26頁下段10行目 口いわにされた→口にされた
最初の誤植は、明らかにローマ字変換でiとuを逆にした打ち間違いがそのまま生きのびてしまったのですが、二番目の誤植にはさすがに目を剥きました。今回、おそらく事情もあって異例にも五校まで見ているのですが(最初と最後が二回余計になっている)、これだけ見ている以上、さすがにこの誤植を見過ごすことはありえない。頭をひねりましたが、最後の最後に大幅な組み換えが実はあり、直前のゲラ(手元にたまたま残っていた)にはこの誤植はありませんでしたので、明らかに組み換えの際に生じたものです。直後に「曰く」がありますが、これは元々「いわく」と書いていたところ、編集判断で漢字になりました。おそらくこの一連の作業で「いわ」の消し忘れと混入が生じてしまったものと思われます。もちろん、編集サイドだけの責任ではなく、念校は僕も見ているのですが、さすがにここで新たな誤植が生じるとは思わず、不覚を取りました……。ヤマサミさんがこちらをご覧かはわかりませんが、そういうわけですので、ご理解いただきたく、引き続き、なにかありましたらご指摘のほどよろしくお願いいたします。
後日インスクリプトさんに誤植の連絡をしようと思っていましたが、不要のようですね。私の乱雑なツイートを、わざわざ探して見つけてくださったものと思いますが、非常に恐縮です。どうもありがとうございます。
文字媒体に誤植の起こり得ることは如何ともしがたいものですが、関係諸氏の労苦お察しします。今回石橋さんにご説明いただき、編集の流れなど窺い知ることができまして、むしろ楽しく思っています。
最後になりますが、ガン・クラブ三部作、大変楽しく拝読しております。この度は私のブログまでご連絡くださりありがとうございました。
『名を捨てた家族 1837〜38年・ケベックの叛乱』
正直に言えば読み辛かったです。それでもヴェルヌの唯一の歴史小説ですから、再読し甲斐があると思いますね。歴史がらみのドラマは理解し辛かった。シーンが思い浮かばないので難儀しました。
中盤からドラマのあちこちにスリルが出てきて面白い個所がありました。とりわけ第九章あたりが面白かった。
それから、気になったのは木版画家がリューではなく、ジョルジュ・ティレ=ボニュ。初めて聞く名前なのでびっくりしました。
また、作中にある詩にも引かれました。ヴェルヌにも詩作の才があるのかと思っていたら、巻末の解説にも触れられていました。
「八篇の戯曲、詩、ポーについてのエッセーなどがあるので、日本に紹介されているのは、彼の作品のごく一部にすぎない(一部引用)」
この文面から、ヴェルヌも詩を書いていたらしいことに気づかされました。それとポーのエッセイも読んでみたいですね。ヴェルヌ詩集も出ないかな。
会誌11月号の編集後記から
『マチアス・サンドルフ』の新訳情報
これはかつて集英社文庫で刊行されていた『アドリア海の復讐』ですよね。出版社はどこでしょうか?
以前にも書いたことですけれど、『マルティン・パス』の結末が似ているので二作品の刊行年を調べてみました。
『マルティン・パス』1852年
『名を捨てた家族 』1889年
『ジュール・ヴェルヌの世紀』から刊行年を探し出した訳ですけれど、副題に『1837〜38年・ケベックの叛乱 』とありますから、『名を捨てた家族 』よりも『マルティン・パス』が刊行年が早いですよね。
とすると、『マルティン・パス』の結末はナイアガラ滝に沈んだキャロライン号を意識したと思って良いのでしょうか?
質問攻めでたいへん申し訳ありません。
ハーディングさん、ガン・クラブ三部作の感想もお待ちしています。その際は、こちらへのコメントではなく、独立した記事を上げてください。
『名を捨てた家族』はヴェルヌ唯一の歴史小説ではありませんよ! すでに邦訳がある『燃える多島海(エーゲ海燃ゆ)』がそうですし、会誌10号で六助が紹介してくれた『フランスへの道』をお忘れですか! また初期に「シャントレーヌ伯爵」という歴史小説を書いていますし、中期には『南対北』を書いています(ヴェルヌ伝を読み直してください!)。それにヴェルヌ詩集はすでに出ていますよ! 会誌7号を復習してください!!
『名を捨てた家族』の挿絵画家はヴェルヌ作品はこの一作しか担当していません。ちょっと画風がリュー(彼も七〇年代初頭の『チャンセラー号』までしかヴェルヌの挿絵は描いておらず、決して多くはないです)やベネット(『八十日間世界一周』ほか多数)とは違いますよね。
キャロライン号というのは史実に合わせた大矢先生による訳であって、原文は「カロリーヌ」。つまりヴェルヌの初恋の相手の名前です。ヴェルヌがこの史実を『名を捨てる家族』執筆前に知っていたかどうか、それはまったくわかりません(ヴェルヌの構想はかなり過去にさかのぼることがあるのは事実です)。ただ、滝に落ちるイメージはユゴーにもあるわけで、史実を知らなくても想像できるのではないでしょうか。
『マチアス・サンドルフ』新訳の件の情報は、春までお待ちください。
『南対北』タイトルは聞いたことがあります。それはタイトルのみしか知らなかったものですから歴史小説とは知りませんでした。
もう一度『ヴェルヌ伝』読み直してみます。ボリュームたっぷりな内容なので、拾い読みして楽しんでいるのが精一杯といったところです。
『ヴェルヌ詩集』見逃していました。ユゴーの影響で詩を書いていたそうですね。滝に落ちるイメージと言えば、やはり『ビュグ・ジャルガル』ではないかと思います。