
石橋さんの解説、荒原さんのあとがきも読み応えがあります。なるほど、そうだったのか・・・
初期作品に対し、『ミシェル・ストロゴフ』以降の中期作品は全体像が見えにくい、ということがありますが、本書、そして今後のラインナップである『エクトール・セルヴァダック』の完訳によって、『黒いインド』(邦題『黒いダイヤモンド』)、『ベガンの5億フラン』(同『インド王妃の遺産』)、『ある中国人の苦悩』(『必死の逃亡者』)、『ジャンガダ』、『緑の光線』、『燃える多島海』(『エーゲ海燃ゆ』)、『マチアス・サンドルフ』(『アドリア海の復讐』)、『征服者ロビュール』と、中期作品の、めぼしいところの邦訳が大体揃ってくることになりましょうか。
(あとは、『15歳の船長』の完訳[ちょっとハードルが高い]、『頑固者ケラバン』など、待たれる作品もまだありますが・・・)
そう考えながら『蒸気』を読んでいくと、この時期のヴェルヌの広さ、深さ、充実ぶりがよく分かります。中期ヴェルヌを読み直す最初の一冊としてぜひ読んでみてください。もちろん、時代精神としての植民地主義も視野に入れつつ・・・
また、『マチアス・サンドルフ』は『蒸気』訳者の一人である会員の三枝さんによる新訳(『シャーンドルフ・マーチャーシュ』)が刊行予定されています。こちらも大いに期待です!